韓国の首都ソウルは、
近代的な高層ビルと古い街並みが混在する都市です。
観光地として有名な王宮や伝統村は、
ガイドブックでは華やかな面が紹介されますが、
地元では今も不思議な言い伝えや謎の史実が語り継がれています。
今回は、実際の歴史記録や現地の聞き取りをもとに、
ソウルに隠された5つの歴史ミステリーをご紹介します。
史実と都市伝説の境界を歩くような感覚で、
お読みください。
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景福宮と「光化門の封印」伝説
景福宮(キョンボックン)は
李氏朝鮮の正宮として1395年に建てられました。
その正門「光化門」の地下には、
悪い気を封じ込めるための「石の亀(亀趺)」が
埋められていたという言い伝えがあります。
風水思想が重視された朝鮮王朝では、
王宮の立地や門の配置にまで
厳密な方位の思想が適用されていました。
亀は長寿や守護の象徴であり、
王宮の基盤を安定させるために配置されたとされます。
しかし、日本統治時代の1920年代、
光化門が移築された際に
この亀が掘り出されたという記録が一部に残っています。
現存する公式資料ではその所在は確認できず、
行方不明のまま。
一部の歴史家は
「移築の際に破損し、廃棄された可能性が高い」
と述べますが、
地元では
「今も地中深く眠っている」
と信じられています。
夜に光化門の前を訪れると、
石畳の下から響くような低い音を聞いたという人もおり、
観光客の間では“封印の鼓動”と呼ばれています。
北村韓屋村に残る「消えた井戸」の記憶
北村韓屋村(プッチョンハノクマウル)は、
伝統的な韓屋が密集する人気観光地ですが、
その裏通りには
古い井戸にまつわる不可解な話が残っています。
数十年前まで、
村人が生活用水として使っていた共同井戸がありました。
ところがある晩、
雷雨の後に水が一滴も出なくなり、
翌朝には井戸の底がひび割れ、
水脈そのものが消えたようになっていたといいます。
地質学的には
地盤沈下や地下水の流れの変化が原因と考えられますが、
村の古老は
「水神が怒って立ち去った」
と語ります。
その理由として、
井戸の近くに近代的な建物が建ち、
祀られていた小さな祠が撤去されたことを挙げる人もいます。
現在その場所は住宅地になっており、
井戸の跡地は一般にはわかりません。
しかし、地元の年配の方に聞くと、
井戸の正確な位置や形状を鮮明に覚えている人もいます。
南山に隠された「朝鮮通信使の秘密の小道」
南山(ナムサン)は
現在、展望台やケーブルカーで人気の観光スポットですが、
かつては
軍事的にも重要な位置を占めていました。
その裏側には、
日本との外交使節団「朝鮮通信使」が利用したという
秘密の小道があったと伝わります。
通信使は国交のための使節であり、
重要な書簡や贈り物を運ぶ際に安全な経路が必要でした。
この小道は一般市民の通行が制限され、
兵士によって厳重に守られていたといいます。
しかし、
日清戦争や日韓併合後の都市開発で、
南山の地形が大きく変わり、
小道は完全に姿を消しました。
近年、
一部の研究者が古地図と地形を照合し、
わずかな痕跡を確認していますが、
観光ルートとしては未公開です。
歴史好きの間では、
このルートを探し当てることが
“南山探訪の究極ミッション”
とも言われています。
昌徳宮・秘苑に眠る「月影石」の謎
世界遺産にも登録されている昌徳宮(チャンドックン)の秘苑は、
王族専用の庭園です。
その奥まった一角に
「月影石(ウォルヨンソク)」
と呼ばれる不思議な石があります。
この石の表面には複雑な模様が刻まれており、
満月の夜にその模様が淡く光るといわれています。
科学的には石英や鉱物の反射による現象と説明できますが、
朝鮮時代には
月と季節の変化を観測する“暦の石”だったという説もあります。
王はこの石の前で祭儀を行い、
国家の安泰と五穀豊穣を祈願したと記録に残ります。
現在も一般公開日は限られており、
夜間に見ることはほぼ不可能です。
それでも、
昼間に訪れて模様を目にすると、
不思議な静けさと重みを感じることができます。
ソウル城郭に残る「名前のない碑」
ソウル城郭(ソウルソンガク)は、
朝鮮時代に首都を守るために築かれた城壁です。
その一部に、
文字の刻まれていない謎の石碑があります。
地元では
「罪を犯した将軍の名が削られた碑」とも、
「建設途中で放棄された記念碑」ともいわれます。
考古学的には、
石の表面にわずかな彫刻の痕跡があり、
元は何らかの銘文があった可能性も指摘されています。
文化財保護庁は「用途不明」としながらも、
石材や加工技術の分析を続けています。
しかし、
その正体はいまだ確定していません。
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まとめ
ソウルは、ただの観光都市ではありません。
石畳や古い建物の影に、
歴史の残り香と解けない謎が潜んでいます。
もしあなたが次にソウルを訪れるなら、
こうしたミステリーを探しながら歩いてみてください。
華やかな観光地の裏側に、
静かに眠る物語がきっと見つかります。
参考文献・引用元
韓国文化財庁公式サイト
ソウル市歴史博物館 資料集
『韓国の歴史と文化』ソウル大学出版部
現地観光ガイドへの聞き取り(2023〜2024年)
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